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日本古来の伝統を持つ兜本体の小札には、国宝の甲冑と同じ素材である手漉きの和紙を使いました。
薄い和紙を幾重にも重ねあわせ、さらに漆を塗って固める、頑強にして軽く作る事の出来る先人達の貴重な知恵と経験が造り上げた伝統の技です。 2センチ四方の小さな和紙を幾つも繋ぎ合わせて、やっと一つの小札が出来上がるのです。 これをさらに幾つにも重ねあわせ一つの兜へと組み上げてく様が、熟練の職人でしかなし得ない技なのです。
さらに吹き返しにはなめし革を用い、甲州印伝で漆細工を施しました。 甲州地方で伝えられる古くからの伝統工芸である印伝細工とは、黒や赤の漆で、なめした革に幾何学的な紋様を施す芸術的な技法です。 この印伝細工を吹き返しの部分にふんだんに扱いました。 古の伝統が融合したすばらしい逸品です。
あごひもに当たる『忍び』には、厄除けとされる朱色の忍びを使いました。 重々しくも華やかな、初節句のお祝いには最適な色使いといえるでしょう。 太めの忍びを採用しているので、より威厳が出ています。
焼き桐枠で作られた高床台には床の間にも使われる本式の流備畳を使いました。
何よりも威厳と迫力を表現した貴重な逸品です。
『小島辰広 略歴』
昭和27年青森生まれ。
中学時代より歴史に多大な興味を持ち、高校大学と年を重ねるごとに特に刀剣、甲冑に強く魅かれ、卒業後には歴史の宝庫と言われる京都に出て、京甲冑師平安光雲に入門、念願の甲冑製作に踏み出す。
十余年の修行の後東京に出、京甲冑を作る傍ら江戸甲冑にも取り組み、京都時代に修得した技を新しい分野に生かし、現代感覚を盛り込んだ積極的な作品造りに取り組んでいる。
江戸甲冑会の注目を集めるまさに売り出し中の作家である。
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